新聞販売店が教える新聞の読み方
みなさんは「新聞の読み方」を意識したことはありますか?「時間がないから」という理由で読んでいないという方も多いと思いますが、要点さえ抑えれば効率よく読むことができます。
学校などで新聞の読み方などは教わっていないという方がほとんどのはず。教わるまでのものではないかもしれませんが、改めて効率よく新聞を読むコツを5項目にまとめてみました。要点は以下の通りです。
- 新聞は初めから全てを読もうとしてはいけない
- 新聞は「ニュースの価値」を知るためのメディアと捉える
- 1面を起点となって紙面に導線が張られている
- 「社説」はおさらいとして読むとわかりやすい
- 重点的に読みたいのは「一報」か「読み物」かを明確にして読む
はじめに
デーリー東北は朝刊のみの定期購読で月々2900円となります。正直なところ、今まで新聞を購読した経験がない方の中には高いと思っている方が多いのではないでしょうか。皮肉にもネットニュースやTwitterなどのニュースの方が「新聞」よりも速報性があるのも事実です。
しかし、ネットニュースやTwitterでは記事の出どころが不明なものや、いわゆるフェイクニュースなども最近では見受けられます。1日100円程度で新聞記者が読者に必要なニュースを厳選してまとめているニュースを手に取り。情報を選別して受け取ることが必要だと思います。
1. 新聞は初めから全てを読もうとしてはいけない
私自身もそうだったのですが、新聞販売店に勤め始めた頃に「新聞販売店に勤めているのだから取扱紙を全部読もう」と意気込みましたが3日経たないうちに読むことが苦痛になりました。
読書などは同年代に比べてもある方ですが、その当時は朝の貴重な時間を1時間程度使って3紙をじっくりと読んでいたのです。次第に時間がないと言う理由で地域のニュースが載っているデーリー東北の1面と地域欄を見るのみとなりました。
この読み方はよほど新聞が好きな方、習慣として長年読み続けている方なら話は別ですが、就活のために読む、社会人になって読むことを半ば強制されている方が無理に読もうとする方には絶対におすすめできません。
「新聞を読まなければいけない」という義務感を取り払うにはどうすればよいのでしょうか。答えは簡単で、読みたいところだけ読めばいいのです。
経営者で地域の情報はキャッチしたい方は地域欄を。社会人になり、仕事の関係者の訃報はキャッチしたいという方はお悔やみ欄を。始めはそのくらいの感覚でよいと思います。もちろん、それだけ読むために2900円も払うのは損だと思うのが普通の感覚です。会社に置いてある新聞、毎日朝に立ち寄る喫茶店の新聞など、最初は「ついでに読む」くらいの感覚で手に取ることをおすすめします。
2. 新聞は「ニュースの価値」を知るためのメディアと捉える
「新しいことを聞く」という漢字から成り立つ新聞ですが、今はTVやネット、SNSでも速報はいくらでも入手できる時代。この時代におけるメディアとしての新聞の「意義」とは何でしょうか?
新聞の存在意義については色々とご意見があると思いますが「相対的にニュースの価値を知るツール」ではないかと考えています。
その日に世界中で起こったニュースは数え切れません。その中でジャンルごとに新聞社が優劣をつけて購読者に対してニュースを掲載しているのが新聞です。それぞれのジャンルに特化した記者が、大事だと思えるニュースを残し、必要ないと思えるニュースは捨てる。その判断を繰り返しながら新聞は制作されています。
現代は趣味や志向の多様化によって、ニュースの価値観に極端な個人差が生まれるようになりました。それが一概に悪いとは言えないのですが、見識の幅が狭くなる可能性があるのも一つの事実です。自分にとって1面級の価値があるニュースと、日本にとって1面級の価値があるニュースは全く異なるでしょう。
新聞はまさに後者の「日本にとって価値のあるニュース」を見出しの大きさ、掲載する面によって相対的に優劣をつけているということを意識しながら読むと、日本の動きを把握するのに役立つでしょう。「自分の興味」だけでなく「日本の動き」を深く知るという意味で大切なメディアです。
3. 1面を起点となって紙面に導線が張られている
聞の1面は相対的価値に基づいて、その日の最も大切なニュースが掲載されていますが、1面の役割は「最も大切なニュースを載せる」だけではありません。ニュースの目次、ターミナル的な役割も果たしているのです。
1面のトップ級にくるようなニュースになると、他の面にも関連記事が掲載されるケースもしばしばあります。このような場合、リード文(前文)の最後に「関連○面」などとついており、別ページへと飛ぶ「導線」が張られています。これらを起点に関心があればさらに深く読み進めるもよし、関心がなければ別の記事を読むのもよいでしょう。
また、最近の新聞は「目次」をより目立つように改良する傾向にあります。目次にはその日のおすすめ記事がされており、これらを読むだけでも重要なニュースがわかるようにもなっています。素早く新聞を読みこなすには目次の活用は必須です。
4.「社説」はおさらいとして読むとわかりやすい
新聞の社説に対して、みなさんはある誤解を抱いています。社説は「新聞からの提言」であると同時に「ニュースのおさらい」として読むことにも意味を見いだせるのです。
確かに社説の見出しだけ読むと憲法9条の改憲がどうこうとか、フランスの新大統領に物申す的な上から目線で、見出しだけ読むと正直、「言わなくてもわかる当然のことを言ってどうする」という感じが漂う主張も多いのですが「ニュースの解説」という視点で読むと、主張に至るまでのニュースの背景が事細かに書かれていてわかりやすいのです。
「言われなくてもわかる主張」として読むより、背景を知るタイミングを失ったニュースをもう一度おさらいするという意味で社説を読むと、新聞を上手に活用できるでしょう。
5. 重点的に読みたいのは「一報」か「読み物」かを明確にして読む
ネットニュースの台頭によって、新聞のあり方も地味に変化を続けています。その中でくすぶり続けているのは、ストレートニュースとフィーチャー記事のどちらを重視するかという議論です。
旧来の新聞はストレートニュースのような一報系の記事を1面のトップに掲載するケースがほとんどでした。しかし、2010年代に入ると朝日新聞や毎日新聞などは読み物系、フィーチャー記事を積極的に1面のトップに置くようになってきました。
事件で犯人がきょう逮捕される、国政選挙の区割り変更を発表前につかむ、企業の人事をいち早くつかむ。いわゆる新聞の「特ダネ」は、やはりストレートニュースがほぼ独占してきました。しかし、フィーチャー系の記事も「知られていない日本、世界の衝撃的な実態を世間にさらす」という意味では、れっきとした特ダネとして地位を築きつつあるのです。
一方、ストレートニュースの特ダネを重視しているのは読売新聞でしょう。読売は医療などの分野に強みを持っていますが、やはり政治や警察系への取材が歴史的に強いせいか、一報系の記事を大事にしている傾向は変わりません。
朝日新聞は2014年の慰安婦の虚偽記載と東京電力の調書誤報問題が重なったことで大打撃を受けましたが、この問題を機にニュースに対する中立性を保とうとする努力が見られます。ニュースにつく識者談話は賛成、反対の両論を併記するようになり、解説系の記事が増えました。記者が紙面において積極的に顔や名前を出し始めたのも、この時期と重なります(この流れは、他紙も乗っかるようになりました)。
巨人が好きだから読売、高校野球が好きだから朝日という視点で好きな新聞を選ぶのは決して間違いではありません。ただ、どの新聞を読もうか決めかねているのであれば、ストレートニュースかフィーチャー記事のどちらを重視するかを軸に新聞を決めてみてはいかがでしょうか。
参考「あなたの新聞」より